
あの街角を曲がれば、
聞こえてくるのはガムランの響き。目を閉じれば、目抜き通りを行き交う雑踏が気持ちをくすぐる。コロニアル風に建てられた家々が白々と朽ちて、赤土の道が縫って行く。しめった風、八角のにおい。丘の上のホテルには、この国の歴代の王家の写真が掛けられている。銀食器のしつらえられたテーブルの向こうで、その一枚に秋の日が射す。ロビーでのざわめきを遠くに聞きながら、この想いを曲に綴る...
エスキスシリーズ三部作がいよいよ完結。 図形楽譜? 革命京劇?インド映画界の巨匠”グル・ダット”?アジアンテイスト満載でお届けする、旅日記サウンドスケープ!
行雲流水の高橋氏がやってきました。手にはアフリカの親指ピアノ、カリンバとリングモジュレーターをしっかり握っています。下の30畳敷きの和室の隅にこじんまりと陣取って、我々は音作りを始めます。まずはsuproというアンプ。50年代にアメリカで作られた真空管式のアンプです。こいつに通せばどんなシグナルもピチピチの活きのよさで、手でつかめるよう。この日は、ジャワのクロンチョンを模した曲に挿入するガムランパートの録音です。純正調に調整されたカリンバにモジュレーションが効き始め、ずっしりとした手ごたえ、抜けるような倍音の透明感。土壁が優しく共振しています。障子の破れ目からは春の満月が見えたりして..前日にはTsuki
No Waのフミノスケ君がやって来て、この曲にとろけるようなコーラスをつけてくれました。はだしで、畳の感触を確かめながら。
出入りの激しいこの家です。年明け早々、7人編成でのリハーサル。胡弓、琴、ヨーチン(中央アジアの弦楽器)..文革時代の中国で盛んだった”革命京劇”にヒントを得て作られた曲、「虎」。aya-colletteはあらぬほうを指さし、腰に手を当て熱唱です。オペラ仕立てですから、8分近くもの間繰り返しはありません。始めはみんな譜面と首っ引きで、うつむいたまま。なぜかベースの守屋氏(tsuki
no wa,accoustic dub messengers)だけは余裕で、一服付けながら微笑んでおられる。おぼえる気が無いみたいです。
neumaのギタリスト、湯川さんは我が家に缶詰めです。あるときは、コンガの赤座氏(マジェスティック・サーカス)とルンバを極め、西アフリカはマンディングのグリオ(吟遊詩人)のアルペジオスタイルを学び、あげくは、モーツアルトの「スミレ」のカバーをハバネラでやるから古賀政男バリにネバレと叱咤される始末。オツカレサマ!しかし何と贅沢なアルバムなのでしょう!!
忘れてならないのが行雲流水の面々。総勢十余人、約半年もの間毎週集まっては入念にリハーサルを繰り返したのでした。彼らが用いる図形楽譜の面白さに引かれ、今回のアルバムに参加を要請しました。ジョン・ケージのオーケストラの様な高鳴りを聞かせるかと思えば、一転、フェラ・クティがドローンを演奏したらこんな具合かも、等々。毎回新鮮な驚きとともに彼らと時を過ごしました。我が家のサイズにもぴったりでしたね。メンバーの立石さんは”OVERGROUND”という音楽評論誌を作ってらして、いつだか、松山晋也さんがリハに遊びにいらしたおり、胸をお借りして盛んに自説の音楽論を展開していたのをよく覚えています。みんなで様子を見守って、楽しい晩でしたね。
他にもコム・デ・ギャルソンからお仕事いただいて、ここで行雲の連中と、慌てて一週間で作品を仕上げたりしたのも、アルバム製作中のいい思い出です(結局ボツになりましたが)。そのときからずっと写真家の岩谷奈津子氏が写真を撮っていてくれて、即出のミニアルバム「SPRING
THUNDER」のジャケットに使わせていただきました。彼女もなくてはならないスタッフです。
さて長くなりましたが、二年にわたる歳月を経て完成いたしました「ESQUISSE 3/3」を皆さんもどうか楽しんで下さいますように。我々は十分楽しみましたから。
*紙版のチラシと一部内容が異なっております。sawako氏への記述に全面的に誤りがございましたので、削除させていただきました。おわび申し上げます。

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